潜入
事件現場のマンションは『駅前公園』からさほど離れていない場所にあった。
恐る恐るマンション内に入り、エレベーター内部の鏡を見る。公開された防犯カメラの映像に、この鏡で髪型や服装をチェックする彼の様子が映されていた。今は鏡の中に我々の姿が写っている。事件の後に引越した住人が多いのか、その階は空家が目立ちます。彼の部屋の表札にはまだ名札が残っていて、ドアの脇には配られた電話帳がそのままに。入り口を何枚かデジタルカメラで撮影し、我々は非常階段へ。
「ここから逃走したんっすね」
「彼、逃げる時、これ見たかな…」
非常階段から隣のマンションの窓が見え、そこにも目に鮮やかな鉢植えがたくさん飾られていた。
ベランダ側を撮影しようとマンション裏に廻り、向い側にある小さなマンションからなら全景が撮れそうなので、そのマンションへ。
「うわ! なんすか? ここ。ゴミマンションだぁ」
そのマンションはなぜかゴミだらけのスサんだ状態。なんだかここのほうが物騒な、剣呑な、嫌な感じのマンション。のどかで平和な風景のすぐ裏手は荒廃している。
最後にマンションの表側から駐輪場などをおさえつつ撮影をしていると、少し離れた場所から我々を観察している人物がいます。ママチャリに乗ったオバさんのよう。我々が撮影を終えると、その人物はママチャリに乗ったまま、おもむろに話しかけてきた。
「君達は事件の取材をしているのかね?」
オバさんだと思っていた人物は長髪の男性でした。
「新しい展開でもあったのか?」
「そうではないですがアナタは?」
話を聞いてみると、その男性は彼と「子供の頃に知り合い」だったと言う。グッと顎を引いて変に姿勢良く喋る人だ。経歴によると彼は生まれてすぐに岐阜県に移っているので、子供時代は市川市にはいなかったはずだ。詳しく聞こうとすると「知っていただけで、友達ではなかったからね」と、話をはぐらかされてしまう。数分、立ち話をして、これ以上はあまり具体的な情報は無さそうだと思い、軽く男性に礼を言い、我々はその場を離れて別の目的地へ向かいました。
「すっごい変なニイチャンでしたねぇ~。怪しすぎますよ、あの人。なんか話の辻褄も合ってないし。Tシャツも宇宙人のプリントで、『ムー脳』みたいな感じ。話し方も妙に芝居がかってて」
「ね、デビット・リンチの映画に出て来そうな奇妙なキャラだったね。なんか『陰謀説』とか言い出しそう」
「あれ偶然に出会うわけないから、あの人は記者が来ないかマンションの前でずっと張ってんですよ、たぶん」
「彼の中では事件についての妄想がものすごく膨らんでて、忘れがたいイベントなのかもね」
PH→ 08 09
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itsushiの投稿です