『遠足』01_05
鏡の中
「マンションの鏡を見る彼の映像って、鏡を見慣れている感じでナルシストっぽかったよね」
「ああたしかに、そんな感じっすね」
「今、逃亡中で行方知れずの状態って、彼が欲しがってた『鏡の中の自分』って実現しちゃってるのかも」
「なんすかそれ?」
「自分の見た目って絶対に自分のモノにはならないよね。いくら鏡を見ても、映像を見ても、それを見る自分という主観しか手に入らないし。例えば、今、ワトさんと話しているワタシが感じるワトさんの印象は、決してワトさん自身のモノには永遠にならない、みたいな」
「たしかに…。それに近づくことはできても、自分のモノにはできないっすね。自分で思ってるのと世間とでは『自分のイメージ違う』っていうか、他人が思う自分の印象ってスッゴク知りたいっすけど」
「現在、消えてしまった彼は、色々な報道やウワサ話やさっきの長髪の人や、そして我々やら、とにかく『人が見た自分の印象』を、自らが消滅することで、特異点として寄せ集めちゃって、それにスッゴク近づいてる。あくまで『消えた犯罪者』としてだけど。生きてるか死んでるかは別にして、彼が発見された時にそれは崩潰しちゃうんだけどね」
「皮肉っすね…」
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itsushiの投稿です