『遠足』02_04

定義
  「ねえ、『ヤクザの定義』ってなんだと思う」
  「そりゃもう単純に悪(ワル)って感じで」
  「でも、善悪の判断は個人の中でのことだけど、ヤクザは組織だからねぇ。よそでは悪人だったとしても組織や仲間うちに対しては善人だよね。見さかいない悪人では組織も作れないし入れない。善悪っていうのはどうなのかな…。例えば『悪が組織化したもの』っていう単純な図式でヤクザ組織を排除しようと『暴力団対策法』ができたけど、逆に悪化してるし」
  「そっすね。『暴力団』という枠組みによってヤクザ自身も『悪の権化』になってゆく、みたいな」
  「さらに最近は経済感覚を身につけた若手のヤクザって、上納金は親分に納めても、キッチリ法を守って稼いでる人も多くなってる、って話もあるし。そうなるともう『悪』ですらない」
  「そ~いえば、団地の住人は事件が起るまで、彼がヤクザだって知らなかったみたいだし、言わなきゃわかんないっすもんね」
  「今回の事件を起こす前から周囲の住人に嫌われてたのならワカリやすい話だけど、実際はけっこういい人っていうか自治会長までしてるし、この人」
  「んん、難しいっすね、単純に『裏社会を仕切ってる』とか」
  「ああ、たしかに『裏社会の中間マージンで稼ぐ人』とは言えるかな。でも『何が表で裏か』と考え出すとどうなのか。法のおよばない部分が『裏』になる、とはいえるにしても…」
  「そうすると『法のらち外の人』とかっすかね」
  「お上からすればね。でも『ヤクザだからただちに法に触れる』(笑)ってことはないから、法の目線で定義するにもムリあるよねぇ。ヤクザの背後には『恐怖』があるから悪である、という理論も在るけど、為政者が政治に『恐怖』を持ち込まないという保証もない。というより『法に触れたら監獄行き』っていうのも、もうすでに…」
  「ああ『罰するぞ!』っていう恐怖を使ってるっすね」
  「単純な秩序が通用しなくなるカオス的なモノの代表に『愛』とか『人情』があるね」
  「あ、ヤクザさんもよく使うっすね、『人情』とか『なさけ』とか」
  「法が通用しなくなるから使いやすいんだろうね。うん、そこいらへんの『カオス的な秩序』にどうもヒントがありそうね」

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