『遠足』04_04

街角の風景
  「なんかさ、赤羽の人って服装がビンボー臭いっていう」
  「ビンボー臭い!? って、ヒドッ(笑)」
  「いや、普通の街より生活感丸出しで歩いてる人が多いからさぁ、ムズカシイんだよね。単に工場の作業着とか部屋着のまま近所を出歩いてる人なのか、それともホームレスなのか、微妙な…」
  「たしかにダメな感じっていうか、ブルーカラーの人が多い感じっすね」
  「でもホッとするというか、嫌な感じがしないっていうか、街に『人生、多少ダメでもいいんだヨ』っていう包容力を感じるな。そういえば主犯格の少年も『タイル工』だから、ブルーカラーってことになるね」
  「『近親憎悪』みたいな感覚だったんっすかね、少年」
  「でも、ブルーだとかホワイトだとかいう色分けって、どういうカテゴライズなんだろうね? モノを造る人と流通させる人? それともモノを造ることしか能の無い奴からピンハネする賢い奴?」
  「うわっ! そりゃまた辛辣な例えっすね。でもボクもサラリーマンの家庭だったから、子供の頃は日雇いの人とか工員の人とか、まったく目に入ってなかったというか、異質な存在だったっすねぇ。そういう風体の人が昼間っから酒臭かったりすると、もうヤな感じの危険なオッサンって感じで…。あっ、そういえば北口のほうにディープな感じの朝から酒を出す立ち飲み屋とかあって、昼間っからウナギとか湯豆腐つまみながら一杯やる人多いみたいっすね」
  「へぇ、それちょっと覗いてみたいなぁ」
   北口、一番街のアーケードに入ると、古びた昔ながらの商店街に。洋品店、靴屋、雑貨店、呉服店、眼鏡屋などなどの個人商店が中心。普通なら大手チェーンに簡単に押しつぶされてしまいそうな店が今でも健在です。立ち飲み屋やウナギ屋などの飲食店は、市場風の開放的な造りで、外から店内がうかがえ、まだ午後の三時だというのに、すでに一杯ひっかける客で賑わっています。
  「どこかに昭和と直接繋がってるトンネルでもあるのかしら」
  「なんすか、それ?」
  「赤羽の昭和的な空気感って、なんかリアルなんだよね。最近流行ってるハリボテみたいなのじゃなくって。バブル期や平成が到来しないまま、変化せずに残ってるっていうか、昔からそのまんまの感じ。街にいる人のたたずまいからしてもう違うっていう」
  「アハハ。どうっすか? もう今から一杯やっちゃいますか?」
  「いや、まだ早すぎるし、荒川とか見にいってからにしょうよ」
   我々は後ろ髪ひかれつつ荒川へと向います。

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