『遠足』06_02
武蔵野
背伸びしきれず中庸でまとまった街並、中折れした市街。そんな形容をしたらヒドイでしょうか。東京とはいっても都心には遠すぎ、田舎と言い切るには微妙な距離。東京という巨大な街を気にしすぎ自らを確立できなかった場所。私自身、東京都下の武蔵野周辺出身なので、どうも一言あるのです。
武蔵野の人は比較的「オットリしている人」が多いといわれるけれど、それは「人が良いから」ではなく「なんとなく自信が無い」し「突き抜けられない」からだ。でも、和都さんに「何も無いって感じの街っすね」と言われるとムッとする。思い入れはあっても口に出して武蔵野文化の良さを語れはしないし、「突き抜けきらない良さ」なんて微妙で風流な感覚はこの周辺で育った人にしかわからない。強く反論できないから思わず口ごもる。良くいえば「恥ずかしがりや」。だから欠点はすぐに隠してしまいます。
「アパートもう取り壊してる…」
「早かったっすねぇ、事件が8月の20日だから2ヶ月ちょっとでもう」
「まあ、6畳一間の古い木造アパートだし、厄介だから事件を期にってことかな。失敗しちゃったな」
07年11月某日。秋の国分寺の住宅街。更地となった事件現場を眺めつつ、なんだか複雑な気分。
「犯人の巡査長ってさ、いいかげん四十路で両親と同居してて独身って、やっぱ特殊っていっていいよねぇ」
「ま、最近は皆、結婚遅いし一概にいえないっすけど、この人の場合は経験豊富で選びあぐねてっていうより、出会いがなかった感じっすもんね」
「女性とつき合った経験ない、っていう話もあるから童貞だったのかしらん」
「どぉーっすかねぇ、童貞だったらスゴイ話っすけど(笑)。今となってはわからないっすからねぇ」
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