『遠足』06_05

不器用
  「世間の常識から隔離されがちっていえば、『異性との出会い』って部分でも隔離されがちっぽそうだよね。警察官」
  「職場以外の出会いは少なさそうっすねぇ。如実に女子の少ない男社会だろうし」
  「彼が女性にウブいわりに、妙にマッチョ思考なのもうなずけると。ま、恋に溺れてる人は、相手に良く思われたくって、ついカッコつけすぎになるし、自分が思う以上にプライドの固まりになってたりする。そこが相手に嫌がられる原因なんだけど、どうにも本人気づかない」
  「あとマッチョ理論が通用する女子ってカクジツに減ってるっすよね」
  「ま、ソレ系が好きなコは『オレについてこい!』っていうワカリやすい強引さを求めてるしね。彼みたいにオクテなタイプはチョットどころかかなり難しいかなぁ」
  「やっぱ、彼が特殊すぎて、彼女に罪はなかったということでいいんすかねぇ」
  「いや、彼女にも罪というか間違いはあったと思う。彼女、親切そうな人だし、客を差別しなかったんだろうけど、それがアダっていうか、『疑似恋愛ネ』っていう常識が通用する相手かどうか、もしくは相手が感情的に一線を超えてないか、もっと早く見極めないと。そこを勘違いさせた非は自分にもあるわけだし、ハッキリ言わずに曖昧に避けたり嫌がったりしても相手には伝わらないし、当事者じゃない周囲の人間が説得してもムリだもん」
  「ああ、よけいな誤解も増えたりでマズイかもっすねぇ」
  「そこいらへん彼女も避け方が下手な感じ。相手が警察官だから油断してたのかな。事のヤバさに気づいてないっていうか、ホントは『ウブでオクテ』な人って疑似恋愛ムリだから、下手にイジッちゃまずい相手だと思うんだけど…」
  「『まさか』って思ってたでしょうね。彼女も不器用な感じするし、イマドキの30代の女性にしては、珍しく普段の生活は地味で堅実で、まったくホステス臭くないっすもんね。オクテな巡査長が思わず本気でホレた気持ち、わからなくもないっすね」
  「その『本気でホレる』っていうのがねぇ…。ストーカーになっちゃう人って恋愛に真面目っていうか高級だからなぁ。『好きも嫌いも理由なし、たまたま偶然』とか『しょうがない、とりあえず』っていう、そういう軽さやいい加減さが理解できてないのよね、彼。彼女は親切そうに見えてもウブなわけじゃないし」
  「いやいや、カヲルさんそんな残酷な」
  「うん、だから彼みたいに純粋な人にハッキリ言うと、言ったこっちが『残酷だ』って悪モノにされたりと。でもね、恋愛を美化しすぎたり夢を持ちすぎたりするのも、一方的でごう慢なことだよ。純情の暴走機関車がストーカーなんだし」
  「『純情の暴走機関車』っすか!(笑)」

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