『遠足』06_06

ナンセンス
  『恋』とは「社会性からの逸脱だ」といえるかもしれない。たしかに「社会制度に則した婚姻」というのはあるけれど「社会制度に則した恋」というのはなんだか変です。私たちが思う恋——或る人を好きになってしまって、鼓動が高まったり、眠れなくなったりする。そして「病」が深まるほどに、何時々々何処でも「貴方が好き」で、食事も喉を通らず仕事も手につかない。徐々に社会から逸脱してゆく自分を感じ不安になる。「貴方に振り向いてもらえないと私は駄目になる」とは「このままだと私は社会性を無くしてしまう」と同じ意味でしょう。『恋に敗れた者=社会性を無くした者』という判定はナンセンスだけれど、私を含めて人は人物に対して単純な判定を下しがちだし、そもそもわたしたちはそれほど思慮深い生き物ではありません。警察官という仕事について少し考えただけでも、職務範囲と人物像をゴチャ混ぜにしていたし、「『警官=正義』という単純なことはない」と頭では理解しても、しっかりとわけて考えることはなかなか難しい。
  「例えば『恋に敗れた者はストーカーになりやすい』って聞くと、すぐに納得しちゃうよね」
  「たしかにそう思っちゃうっすね」
  「で、『ストーカー』を『反社会的人物』と置き換えると、『恋の敗者=反社会的行動の可能性』っていう考え方になる。短絡的だけど。でさ、警察官が反社会的になるとマズイから、そうなる可能性として…」
  「警官が恋に敗れるのはマズイっすね」
  「『警察官は恋に敗れてはならない』って、ありえない要求だけど、暗にウカツな恋愛は控えるようにっていうプレッシャーはありそう」
  「権力者として隔離されてて、異性との出会いが不利で、ダメ押しに『恋愛控えろ』って、それ、ツラ〜イ立場っすねぇ…」
  「だから、彼も思いっきり背伸びしてたんだろうね。『今度こそ』って」

PH→ 05 06 07

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