『遠足』06_07
天国への階段
わたしたちは通常「○○としての」という前提を設けて行動する。彼女は「職業としての恋」を身にまとい、彼は最後まで「職業としての正義」を身にまとっていた。わたしたちは前提のある行為を続けながら、そのむこう側にある前提のない夢をおぼろげに予感します。「前提なしに行為する」とはひとつの憧れであり、それは特別なものでしょう。そしてそれは自ら求めても手に入るものではない。なぜならそれは或る日偶然に到来するものだから。
彼女が勤め、彼が足しげく通った立川のキャバレー『ハリウッド』は10月に閉店してしまいました。ビルの6、7Fの階段には赤い絨毯を模したフェルト地が敷かれ、壁には書割の星屑模様が残されていた。この階段を昇りながら、互いに「このヒト、大丈夫かな」とか「今日も逢えた」と思ったりしていたでしょうか。
(遠足06_Fin)
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