『遠足』08_07
撞球
「タカシマヤの屋上はまだ歴史が浅いせいかな。他の屋上と比べると味わいが足りなかったね」
「そっすね。妙にカッコつけてるわりにガラスとか汚れてて、ダメな感じだし」
池袋、西新宿から南へと繁華街を駆け足で巡り、最後に歌舞伎町の喫茶店『銀座ルノアール』に落ち着く。なんだか気ままに弾かれるビリヤードの球になったような気分。
「今日は話が色々飛んじゃったな、アハハ。でもここ落ち着くねぇ」
「『ルノアール』はホッとするっす」
「あのさ、妙な言いまわしだけど、今日、屋上巡りをしてて、ふと『普段見慣れてるモノのほうが新しい』って思ったんだよね」
「ん、待って下さい。また妙な…」
「外から来た新しさってすぐに旧くなっちゃうんだけど、そういう『最新』とか『革新』じゃない新しさっていうのかな。わたしたちって例えば『西欧文化』みたいなのが外から来ても、対立させるんじゃなくてゴチャ混ぜの渾沌にして、そこから新しいモノを自然に創る。カレーとかトンカツとかスパゲティーのナポリタンとか。『デパートの屋上』だってそうだし、新宿にある『銀座ルノアール』もそうだと思う。一見、なんの変哲もないのに、実はものすごく新しい。不条理なのに落ち着いて、自然に受け入れることができる。そういう新しさって、次々に変化しながら決して『旧く』はならない、と思っ…」
「ダカラ、ちょっと待って下さい! どこまで話が飛ぶんっすか!」
「ん? いいじゃん。『飛ぶ』話なんだし。アンタ『巻き添え』」
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