『遠足』09_03
不安の立像
私はこの事件を起こした彼のような人が正直、恐いのだ。当時の私の境遇とどこかしら似ているから。または、この街に向ける視線が私と似ていたかもしれない、と。
私にとってこの街は不安の立像だ。追い立てられて辿り着き頼る人もなく、辺りは見知らぬ剣呑で不機嫌な風景。目を閉じて息を殺して暮らし、やっと逃げ出すことができた場所。そして当時同棲していた人とは今も生活を共にしている。まあまあ、うまくやっていると思う。でも、もし将来生きることに失敗したら、またこの街に戻ってしまうかもしれない。振り出しの場所、ほの暗い先触れ。
私はバイバイしたけれど、彼はここに繋がれて動けない。辿ってきた暗い人生と、自暴自棄で場当たり的な犯行。まるで昔のチープなテレビドラマに登場する「犯罪者の履歴」みたい。さして注目されない「登場人物B」。無意味な犯行。私がこの場所での生活に意味を見い出せなかったように、後先を考えない行動をして捨ててしまってもかまわないほど、彼にとって家族とこの場所での生活は無意味だったのでしょうか。でも、少なくとも彼には生活ぶりを心配してくれる人がいたのだ。
さて、そんな想像を巡らせて「彼と彼の家族と、私と私の家族の人生は違う道を辿ったんだ」と考えてみても、私の不安は消えません。なぜだろう。
では、感情に流されないように、色々な言葉を組み合わせて「レイプ」という犯罪について、もっとちゃんと考えてみるといいかもしれない。
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