いっぽん道
事件現場のアパートは、現在ほぼ全ての住人が引越してしまい、空っぽに。ゴミ捨て場に散らかるビニール袋は、或る映画のワンシーンみたいに風に煽られて踊っています。フワフワと地に足をつけず、互いに無関心に。
「これは大家さんこまっちゃうっすね。造りも新しいから建替えるわけにもいかないだろうし」
「これもなんか滑稽だよね。彼女が殺されるまで、アパートの住人は前の事件を知らされてなくって、犯人が捕まってから皆引越すって、どうも順序が…」
「まあ、部屋も狭そうだし、皆、仮住まいのつもりだったんじゃないっすかね。事件があって報道陣とか騒がしいし、2度も凶悪事件が起こる物騒な場所っていうイメージもあるし」
「ここ、見るとスゴイ風景だね。彼がホームグラウンドにしていたパチンコ店のすぐ隣が例のスーパー、そして200メートルぐらいでこのアパートと、道なりに一直線に並んでる」
「まさに直情的っすねぇ」
「そしてこの道をそのまま芝川方面に進むと彼の自宅アパート。一本道を延々直進するこの感じってまさに」
「川口って感じなんっすね」
我々は次に、彼が住んでいた源左衛門新田という場所を目差します。通船堀大橋を渡ると緑や畑が増えてきて、徐々に田舎の風景に。ちょうど下校の時刻なので、近所の学校に通う小学生がちらほらと歩いています。2キロほど延々歩いて木曽呂付近で斜め右に進むところを直進してしまい、方向感覚を失ってしまった。差間南の交差点を過ぎて右の住宅地が源左衛門新田のはず。路地に入ってみると、私が知っている川口市の印象とはまた違った街並。一戸建てが中心のなんとなくホッと落ち着く風景。
「あらまぁ、また川口のイメージが変わっちゃうような風景だなぁ」
「なんかちょっと小奇麗っすね。さっきの事件現場とどこがどう違うかって聴かれると困るっすけど」
「うん、空気感がまるで違うね」
一時間ほどあれこれと住宅街を歩き回ったけれど彼のアパートは発見できず。諦めて大通りに出て、タクシーを捕まえてJR川口駅に向います。
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