『遠足』10_07
道標
前の取材は金曜日だったので日曜日はどんな様子かと、ふたたび戸越銀座を訪れました。個人商店はシャッターを閉めている店が多く、道端でバザーが催されている。特別な日だったのか、それとも或る商店会では日曜が定休日なのか。大手チェーンに属する店は通常営業です。
評判を聞いて訪れる観光客には、大きなアーチや戸越ブランドというしるしが必要だ。けれども地元に住む人々にとっては、生活するのに便利なご近所の慣れ親しんだ商店街なのです。気になったパン屋さんで惣菜パンを買うと、店主に「お散歩ですか? 近所に住んでるの?」と話しかけられ、街の外から来たことがバレバレだった。
中原街道まで歩き商店街の終点に到着。角にある古書店を覗く。古くて珍しい雑誌が揃っている。中から『商店経営ハンドブック』という、なんだか戸越銀座にふさわしいシリーズを見つけました。昭和34年に発行された個人商店を始めるためのノウハウについて書かれた冊子だ。パン屋、洋服店、飲食店などなど色々あり、そこから選んで「青果物店」版を購入する。3500円。ちょっと高い買い物。古くて役には立たないかもしれないけれど、これを読んでその気になりさえすれば、ゼロから個人商店を始めることもできる。それは「何者かになる」ということではなく、行き着く先はわからないが「何かを開始することができる」という自由へのしるしだ。
(遠足10_Fin)
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