『遠足』12_03

お手入れ
   ナァんて、「黒い会話」を延々するのにチョット疲れたので、近所にある井の頭公園敷地内の運動場に。脇にあるいい感じで崩れかけたプールを眺めつつその広場に入る。途中で草臥れた野良猫にムッと威嚇されてしまった。猫ちゃんゴメン、と周回トラック脇の芝生に寝そべる。
  「この一年、色々な事件現場を取材してて、人に非難されたりもしたんだよね。『終わったことを興味本位でまたほじくって』とか言われて…。んでさぁ、さっきの『碑文』じゃないけど、色々あった場所にはお地蔵さんとか小さなお社とか建てればいいのにと思って」
  「あっ、それもまた『不謹慎だ』とか言われそうっすよ」
  「不謹慎ねぇ…。でもさぁ、今まで見てきた事件って『シャレの通じない人がシャレになんないことをした』とはいえるんだよね。で、その後の世間の受けとめ方や現場もまた『シャレになんない』ままな気がして。穴を塞いで無かったことにしても、お話として腑に落ちない」
  「でも『シャレにする』っていうのもちょっと難しいっすよね」
  「うん、だからお地蔵さんやお社を建てる。『もう忘れましょう』って禍いを鎮めるのと、逆に『いつも気に懸けていよう』っていう二重の意味がある。いい方法だと思うんだよね。継続して花とか供え、掃除して管理したり。お話としてもオチがつくじゃない」
  「たしかに、そう言われると悪くない方法かもっすね」
  「そういえば、このグラウンドいいでしょ」
  「なんか不思議っすね。いきなり周回できるトラックになってて」
  「黙々と練習に励むアスリートも、散歩のオバチャンや親子も適当に混じってる妙な運動場なんだよね。金を使いたがる真面目な官僚は、すぐスタンドとか余計な施設を建てそうだけど、ここは違ってる」
   案内板やトイレ、芝生や競走路が整備されているけれど、厳密すぎず「適当に見える」のが良い。でも「そう見える」だけで、細かいお手入れはされている。広場の隅にはポツンとお社が。「好い加減だぁ」と、走るアスリートをしり目に芝生にゴロン。でも、そろそろ行こう。

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